施工現場はカラオケボックス。オープン日はすでに決まっている。
 そこにハプニングが起こった。
 クロスにプリントミスが発見されたのだ。さっそく兼平は現場に。
 たしかに指摘されればプリントミスがある。その場からメーカーに電話を入れる。同じ品番なら在庫はあるという返事。
 だが、同じ品番のものでいいのかどうか、瞬間、判断に苦しむ。
 同様なプリントミスがある可能性もあるからだ。
 右か左か。といって、他の品番にするには工務店の承諾が必要だ。
 ええい、賭けてみよう。
 兼平は同じ品番を告げた。


 翌日、また現場から連絡が入る。
 きのうと同じところです。
 自然と手が頭に伸び、髪の毛をかきむしる。
 判断がまちがっていたのだ。
 ここで冷静にならなくては。
 兼平はコンピュータに向かい深呼吸をし、プリントミスがあった柄と類似の柄で、いまいちばん人気のものを、データのなかから探し出した。
 それから工務店に電話を入れ、事情を話した。先方も時間がないから寛容な態度はとれない。結局、同じものが使えないなら兼平の提案する代わりの品でいこう、となった。
 今度の右か左かは、勧めた柄を先方が気に入るかどうか、なのだ。

  

 施工現場に向かっている最中、兼平は渋滞にまきこまれた。到着が15分ほど遅れた。不吉な予感だ。
 現場には、昨日話した工務店の担当者が来ることになっている。
 着くと、ブスッとした担当者がいた。クロスを広げても、
 張ってみなけりゃわからん。
 というばかり。
 ダメ元で作業にかからせる。
 30分、1時間。次第に担当者の顔がほころんでくる。
 こっちのほうがいいな。
 担当者がそう言ったのは2時間ばかりたってからだ。
 データに裏付けされた判断の勝利。昨日の判断の誤りが悔やまれた。