広大な空地が担当エリア内にあると、営業マンは落ち着かない。いつそこが動き出すか気になるからだ。石川のエリアにも、気になる空地がいくつかあった。そのなかのひとつに動きがあらわれた。
 重機類がならび、多少の資材が隅に積まれていた。正確な期日はわからないが、ここがつぎの現場になることはまちがいない。
 動くのか、やっと。
 バブル崩壊後、この周辺では大規模開発の着手が手控えられていた感がある。茂った草をみて、さびしい思いをしたこともあった。
 停めた車から石川はあらためて空地を眺めた。空地は騒いでいた。


 建物はなんだろうか。マンションだろうか、それとも戸建てか。
 最寄り駅からは多少遠いが、マンションであっても不思議はない。すでに近辺にも何棟か建っている。
 まさか、倉庫ではないだろう。
 会社の寮ということもある。
 運びこまれる資材を確かめれば判明することだが、それを待っていては遅い場合もある。手がかりを探すが、石川に確証は得られない。
 ゼネコンもどこかわからない。会社名が判明すれば、系列の内装会社も予想がつく。そうなれば一歩踏み出すことができる。
 数日たてば─そう自分にいい聞かせても、目はそこを動かない。

   

 もし、来週あたりから基礎工事がスタートして、ここに10階建てくらいのマンションができるとしたら、と石川は想像する。
 竣工は秋が深まってからだろう。ひょっとしたら12月になる可能性もある。とすれば、材料の確保は早いほうがいい。毎年、この時期は材料の奪い合いが起こる。
 必要となるクロスの量も相当なものだ。帰ったらそれとなくメーカーにもたしかめておくべきだろう。
 車をスタートさせながらも、石川の思考はつづく。内装工事会社が判り、うまく受注できたら、納品日までに自分はどう行動すべきか。
 ハンドルを握る手に汗が浮いた。